先日、とても有難いお電話がありました。
「先代の社長さんの時代に建てていただいた、〇〇ビルのことで・・・」
当社創業から12年、昭和43年に地元新宿で建てさせていただいた、RC造地下1階地上6階のビルについて、防水や外壁のメンテナンスについてのご相談を下さいました。
今を遡ること47年前ですから、当時の社長である父が37歳のバリバリ現役で、恐ろしいほどの勢いで仕事をしている時代、そして私は7歳でしたから、ちょうど「お父ちゃんの後を継ぐ」と宣言し始めたころ。(笑)
木造から鉄筋コンクリート造へと工事を展開し始めた時ですから、いろいろと試行錯誤で工事を進めていたことと思います。今のように便利な機械や道具などが揃ってもいないし、どの業種も協力業者などというフォーマルな感じを持ち合わせてもいない。それぞれがプライドや意地を力にして、喧々諤々とやり合いながら建物の完成を目指し、命がけで突き進んでいた・・・のではないかと思っています。
実はこのビル、当時父がいろいろと話してくれて、わずか7歳だった私の記憶に深く刻まれています。中でも下記の二点は鮮明に頭に残っています。
基礎、地下室の工事では、湧き出る大量の水との壮絶な戦いに、文字通り命がけで挑んだこと。
完成した時に、その建物の形が話題になって、新聞や週刊誌の小さな記事になったこと。(今でも当時見せてもらった記事の写真は、鮮明に覚えているんです!)
父はビルの完成に感慨無量で、誇りを持って私に説明してくれたのだと思います。
その後諸事情で、ビルのメンテナンスには関わっていませんでしたが、ご縁を授かり、本日オーナーご夫妻と現場でお会いすることができました。
「本当にしっかり造っていただいて、震災の時にも何一つ不具合が出なかったんですよ。」とのお言葉。そして、まだこれからこのビルを大切にしたいので、ここでメンテナンスを・・・と温かい思い。建物は人間のように言葉がしゃべれませんので、自分からはこうして欲しいとは伝えることができません。ビルオーナーが聞こえぬ声に耳を傾けてくださって、このビルは幸せです。お二人の話を伺うと、どれだけの愛情をこの建物に注いで下さっていることか、ひしひしと伝わってきます。笑顔で聴いていましたが、なんだか嬉しくて有難くて、胸にこみ上げるものがありました。
同時に一つ反省もありました。今日までに建築させていただいた建物に、オーナーだけではなく、私ももっともっと愛情を持って接するべきだろう・・・わかっている「つもり」にはなっていたけど、自身の行動を振り返るに、現実はそれを表していないんじゃないかと。一件一件、もう一度澄んだ目で見つめ直そうと思います。
今回のお声掛けから、多くの学びをいただきました。
「お父ちゃんの後を継ぐ」と言った7歳と、今54歳の私。時を超えて対話してみます。
お客様に感謝し、父に敬意を表しながら。