1. 概要
ビルオーナーは他にも数件の不動産物件を所有され、ビル経営の観点をしっかりと持っておられる方。今回の大規模修繕も、漠然とした不安などではなく、ご自身が計られていたタイミングで実施に至った。
工事区分 | 外装 大規模修繕 |
---|---|
所在地 | 新宿区 Aビル |
完成 | 1992年(平成4年) |
構造 | 鉄筋コンクリート造5階建て |
規模 | 延べ520m2 専用住居+共同住宅 |
2. 相談内容
不安
特段大きな不具合を感じての事ではないが、ビルオーナーが建物の管理について常に学ぶ意識を持っておられることで、経年劣化による事故や、主要構造への影響等を未然に防ぐことを重要視されている。
また、「悪いところがあれば必ず報告→即時のご判断をくださる」といった、決断力ですべての不安を払拭する進め方をご希望。
3. 所見
本件の最重要課題は、タイルの剥落防止。一見、遠目には何事もないように見えますが、実際に足場に上がると驚くほど浮や剥がれを発見することもあります。
今回は積算の前に、ブランコによる打診調査を行うことをお薦めし、初期の段階で建物の総合的な健康状態を把握してからスタート。
4. 処方
所見のブランコによる打診調査の結果があるため、足場を架けて初めて見る不具合は少なくて済みます。タイルの打診調査ではありましたが、塗装の劣化状況などもすべて把握済み。
しかしながら足場を架けて、じっくりと様々な角度から見ると、新たに見えることも多々あります。
タイルの補修については、足場を架けてから多くの目で見つめ、あらゆる方法の検討が必要でした。現在使用されているタイルは、既に市場に無く、類似品と呼ばれる品でも全く色艶が違い、せっかくの重厚感ある外観を損なうことになります。
数カ月の納期と多額な費用をかければ、タイル工場で製作してもらうことも可能ですが、この規模の工事においてはあまりに負担が大きくなるため、通常は取らない手法です。
街中で建物を見ると、まったく違う色のタイルが貼られているのを見ることがあります。致し方ないことではありますが、今回はそれだけは避けるべく、接着注入に主眼を置いての施工となりました。
5. 効用
安心
熱心なビルオーナーですので、工事中はご自身も足場に上がられて、諸々の施工状況をご確認くださいました。ご自身の目で確かめ、一層安心感を高められました。
満足
「タイルの色がまばらになるくらいだったら、範囲を決めて貼り替える!」というほどの覚悟でご依頼いただいた工事。部分的には類似タイルを納めた部位も有りますが、まったく気にかからない外観を維持し、新築当時に選ばれたタイルの重厚感がそのまま生きました。
本件の最重要事項でしたので、ほっとされています。
ビルオーナーがビル経営を学ぶこと、経験を重ねること、それが大切な建物を守り育てる・・・
それをお手伝いするのが私たちの使命。
そんなことを強く感じた案件でした。